がん診療連携推進病院の指定を受けている当院では、がん患者さんの病態に応じたより適切ながん医療の提供ができるように、毎月1回、医師、看護師、薬剤師、検査技師、栄養士、ソーシャルワーカーなどの多職種の医療スタッフが参集し、がん患者さんの診断や治療方針を検討しています。
【開催報告】CancerBoard No.25
第25回 Cancer Board
1.製品説明:「ザルトラップ点滴静注」
ザルトラップ(アフリベルセプト ベータ)はVEGF阻害剤に分類され、VEGFファミリーである(VEGF)-A, B、胎盤増殖因子(PIGF)に結合する特徴がある。ザルトラップはVEGFRにリガンドが結合することを阻害することにより、抗腫瘍効果を示す。
適応は、切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌でFOLFIRI療法との併用でオキサリプラチンベースの治療の2次治療として効果が確認されている。
2.ミニレクチャー:「転移性骨腫瘍の診断と治療」 新谷整形外科部長
近年、がん治療の進歩により、がん患者の生存期間が延長し、その結果として骨転移を有する患者も増加している。骨転移は、病的骨折や脊髄麻痺を生じ、患者のADLを下げる大きな要因となる場合がある。骨転移を生じやすいがん種としては、前立腺、乳腺、肺、腎、甲状腺などがある。また、症状がないものを含めるとがん患者の約50%に骨転移があり、10%には症状があり、治療の対象となる。
骨転移病変の検索には、PET、骨シンチ、MRIなどが有用であり、症状が現れる前の早めのスクリーニングが重要である。治療は診断後、リスク評価を行い、手術適応であるか、保存的治療を行うかが決められる。保存的治療に用いられる薬剤には、ビスホスホネート製剤、抗RANKL抗体薬、ホルモン療法、放射線、抗がん剤治療などがある。その他には、ラジオ波や温熱療法が用いられる。手術は予後6か月以上の場合に適応となり、腫瘍切除又は姑息的手術が行われる。骨転移の治療は整形外科医のみならず、IVR科、患者の主科、放射線科、緩和科との協働が必要である。
3.地域がん登録の入力状況について
4.症例検討:「直腸神経内分泌腫瘍」 消化器・肝臓内科 青野医師
患者は67歳男性、近医より、大腸多発ポリープで紹介された。既往歴、検査データなどは特に問題なかった。大腸カメラで直腸に直径12mmの白色のポリープが認められた。病理結果は、CD56陽性、クロモグラニンA陽性より、NET G1と診断された。当院では切除出来ないため、天理よろづ病院へ紹介となった。
NETは、これまで、カルチノイドと呼ばれていた疾患で、神経内分泌細胞へ分化する細胞から生じる。消化管や肺、気管支に生じるが、最も頻度が高いのは消化管である。病期はG1、G2、G3に分類され、G3は悪性であり、NECと診断される。NECの予後は不良で、6か月以内に34%の患者が亡くなり、1年生存率は10〜15%である。内視鏡では、類円形、粘膜下腫瘍隆起が特徴である。治療は根治手術が有効であり、化学療法にはコンセンサスがないのが現状である。
5.その他
- 次回開催予定日:平成29年9月1日(金)15時より
次回は、放射線科、田中医師によるミニレクチャーと腫瘍内科、岩田医師からの症例検討を予定しています。