がん診療連携推進病院の指定を受けている当院では、がん患者さんの病態に応じたより適切ながん医療の提供ができるように、毎月1回、医師、看護師、薬剤師、検査技師、栄養士、ソーシャルワーカーなどの多職種の医療スタッフが参集し、がん患者さんの診断や治療方針を検討しています。
【開催報告】CancerBoard No.21
第21回 Cancer Board
1.製品説明: 「ゾーフィゴ静注」
ゾーフィゴは、骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌に対する有効性が確認された世界初のα線放出放射性医薬品であり、国際共同第III相臨床試験において、症候性骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌患者に対し、プラセボと比較し、全生存期間、症候性骨関連事象発現までの期間を有意に延長する事が確認されている。主成分である塩化Ra223は骨転移部位に取り込まれ、高エネルギーのα線を放出する事により、高い抗腫瘍効果を発揮するが、一方でα線の組織内飛程は凡そ細胞10個分未満であり、周辺正常組織に対する作用は限定的であるため、副作用の少ない治療が可能であると考えられる。
2.「ゾーフィゴ静注」の取り扱いに関する講習会①
RI内用療法はI131や、Sr89など主としてβ線を放出する核種が用いられてきた。β線はDNA二重鎖のうち一本のみを切断する位の力であるが、α線は二本鎖切断ができる。これによりDNA修復メカニズムが非常に働きにくくなり、またα線は酸素依存性、細胞周期依存性も低く、このような事からα線では非常に高い抗腫瘍効果が期待できる。透過力の観点ではβ線(電子)の組織内飛程距離は数mmであるのに対して、α線(He原子核)は100µmと短いため、α線は周辺正常組織である骨髄への影響が少ない特性がある。
このほか,塩化Ra223による内用療法についての汚染管理や治療室からの退出基準、適正治療の為の運用、責任体制を明確にした医療体制の構築についても紹介された。
現時点で三重県下においてRI内用療法として塩化Ra223の取り扱いが出来る施設は限られており、伊賀・名張地区において施設基準に到達できる医療機関は当院のみであるため、多くの患者の治療に貢献出来る可能性がある。
3.地域がん登録の入力状況について
4.その他
・次回開催予定日:平成29年4月14日(金)15時より
次回も引き続き、放射線内用療法医薬品「ゾーフィゴ静注」の取り扱い講習会を予定しています。多数のご参加をお願いします。