がん診療連携推進病院の指定を受けている当院では、がん患者さんの病態に応じたより適切ながん医療の提供ができるように、毎月1回、医師、看護師、薬剤師、検査技師、栄養士、ソーシャルワーカーなどの多職種の医療スタッフが参集し、がん患者さんの診断や治療方針を検討しています。
【開催報告】CancerBoard No.20
第 20 回 CancerBoard
1.製品説明:「ゴナックス皮下注用」
前立腺ガイドライン2016において、ゴナックスは一次ホルモン療法において推奨グレードBで記載された。ゴナックスを投与する際には、注射部位反応の有害事象に対するマネジメントが必要だが、海外第Ⅲ相試験において他薬効群と比較して早期にPSA値等を低下させるなどの有用性が示された。また、専用溶解液添付製品の新発売により、調整時の利便性向上も期待される。
2.ミニレクチャー:「癌と栄養」 奥川医師
当院では2月より、がん患者の栄養教育入院プログラムを開始する予定であり、患者教育の内容について紹介された。
がん患者は、低栄養となることが多く、60〜80%の割合で生じ、特に上部消化管のがんで多くみられる。低栄養の患者では、抗がん剤の副作用が出やすくなったり、効果が十分に発揮されない場合がある。また、栄養療法は、手術、化学療法、緩和の全ての場面において重要な役割を果たす。
低栄養はがんに伴う食欲不振やがん悪液質によって生じる。また、がん悪液質の状態になると、がんから様々な因子が放出され、骨格筋の減少や食欲不振、味覚異常、倦怠感などを生じる。
これらのことから、当院では、多職種による早期からの栄養サポートを行うため、栄養教育入院プログラムを開始することとなった。がん悪液質の早期発見のためのインボディによる筋肉量や浮腫の測定や、悪液質の進行に関与する炎症反応をおさえる栄養剤の提供などを予定している。
3.地域がん登録の入力状況について
4.症例検討:「びまん性肝転移像を呈し急性肝障害を併発後、興味深い臨床経過を示した悪性リンパ腫の一例」 田中光司医師
84歳男性、右季肋部痛を主訴とし来院、CTにて、多発びまん性肝腫瘍、膵腫瘍、頸部リンパ節転移、骨転移が疑われたが、通常の膵がんとは所見が合わず、悪性リンパ腫など他疾患の可能性も考慮する必要がある病態であった。その後、胸椎より生検が行われた結果、CD20(+)、CD79a(+)、CD3(-)、CD5(-)のB細胞悪性リンパ種と診断された。
細胞診の最終結果が出る前に肝不全による全身状態の低下がみられたため、緩和目的でリンデロン4mgを投与したところ、全身リンパ節病変や肝・脾・骨病変の著名な縮小がみられた。その後、全身状態も改善したため、化学療法目的で他院へ転院となった。
5.その他
・次回開催予定日:平成29年3月10日(金)15時より
次回は、5月頃より、当院で使用予定となっている放射線内用療法医薬品「ゾーフィ ゴ静注」の製品説明及び取り扱い講習会と中西研修医からの症例検討を予定しています。多数のご参加をお願いします。