伊賀市立上野総合市民病院院長
田中 光司
2021年の伊賀医療圏と上野総合市民病院の現状を振り返り、2022年の抱負を述べたいと思います。
伊賀医療圏は、伊賀市;約8万8千人、名張市;約7万6千人の合計16万4千人からなる医療圏で人口減少と高齢化が進んでいます。岡波総合病院・名張市立病院・上野総合市民病院による夜間・休日の時間外救急の輪番制において、令和2年度は岡波総合病院:2700人、名張市立病院:2865人、上野総合市民病院:2351人の時間外救急患者を受け入れました。
令和2年度の上野総合市民病院の診療実績は、入院患者数:62514人、外来患者数:60191人、消化器内視鏡件数:4235件、手術数:864件、がん登録患者数:350件でした。
総務省のホームページでは自治体病院の決算状況・病院経営比較表が公表されています。令和2年度の当院は、経常収支比率:103.9%、医業収支比率:96.7%、平均入院患者数:171.3人、稼働率:61.0%、職員給与費対医業収益比率:56.1%、委託料対医業収益比率:11.7%、医師数:19人、看護師数:149人、繰入金:461878千円、他会計繰入金対医業収益比率:8.4%でした。当院は職員数の少なさをチームワークでカバーし、なんとか医療提供体制を維持しています。
安全で質の高い医療を提供するためには、まず、職員のスキルアップが必須となります。業務改善・生産性向上の目的は経営改善ではなく、職員がスキルアップできる職場環境を整えることです。たとえば、診療業務時間を短縮できれば(業務改善)、院内・院外の研修や研究会・学会へ参加する時間が確保できます。勤務時間内に多くの業務をこなすことができれば(生産性向上)、より多くの患者を診療でき、患者に喜んでもらえます。業務改善・生産性向上による職員のスキルアップは、患者満足度(はやく、うまく治してくれる)だけでなく、職員満足度(患者に喜んでもらえる医療ができるという達成感)の向上に寄与すると思います。
Volume-outcome relationshipとは、患者数と診療成績は相関することを示しています。当院が患者に喜んでもらえる医療を提供すれば、受診する患者が増え、多くの経験を積んだ職員はさらに安全で質の高い医療が提供できるようになるという好循環が生まれます。
2021年より7つのチーム(消化器疾患、整形外科疾患、救急医療、心不全、がん化学療法・緩和ケア、栄養サポート、在宅支援)が、「患者のため」をキーワードに活動を開始しました。多職種混成メーンバーが特色です。
2022年も「伊賀地域で必要とされる病院とはどうあるべきか」を考え続ける1年になります。
2022(令和4)年 1月